シリーズ: 洋楽で学ぶ英語 〜Say it ain't so編〜
こんばんは。
気がついたら中学入学から十年以上経過していた来週さんです。
いやあ時の流れはあまりにも残酷ですよね。
いつの間にかこの世に生を受けてから四半世紀になろうとしているわけですから。
同じようにこのままアッという間にオッサンになっていくのでしょう。
しかしそんな容赦無い時間の流れが矢の如きスピードであるお陰で、私は中学時代を昨日のことのように思い出せるのだとも思います。
今日はそんな私の中学時代を彩ってくれた素晴らしい音楽と共にちょっとだけ英語を学んでみようかと思います。
■俺たちの青春、ウィーザー。
- アーティスト: Weezer
- 出版社/メーカー: Geffen Records
- 発売日: 1994/05/10
- メディア: CD
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見よ。このジャケットの冴えない四人の青年たちを。
彼らはWeezerというバンドで、左からドラムス担当パット、ボーカルギターでほぼ全ての曲の作詞作曲を手がけるリバース、ベース及びコーラス担当マット、そしてギターとコーラス担当ブライアン。
私はこのWeezerの1stアルバム『Weezer』(ジャケットが青いので我々ファンはThe Blue Albumと呼んでいる)を中学二年くらいの頃にバカみたいに聞いていました。
アメリカのバンドなので歌詞はもちろん英語で全然意味もわからず、歌のメロディやバンドのアンサンブルだけ聞いていました。
最初に触れたようにジャケットの四人があんまりにもパッとしないので、さていったいどんな音を聞かせてくれるのやらと心配になってくるかもしれませんが、ディスクをプレイヤーに突っ込んで再生すると、控えめなアコースティック・ギターのアルペジオが流れ出し、そしてそこから怒涛のように掻き鳴らされる爆音のギターによって幕を開ける一曲目『My Name Is Jonas』に耳を奪われること間違いなし。
彼らWeezerはこのThe Blue Albumで名を上げ、そして2nd『Pinkerton』でスベり(メインストリームでは受けなかったがファンの間ではカルト的人気がある)、マットの脱退などの暗黒期を乗り越えて生み出された『Weezer』(コチラはジャケットが緑なので通称: The Green Album)、レーベルと揉めつつも発売まで漕ぎ着けられた『Maladoroit』……そうしてすくすくとアメリカのオルタナティヴ・パワーポップ・シーンをリードし続け、『Make Believe』、『The Red Album』、『Raditude』、『Hurley』、『Everything Will Be Alright In The End』、『The White Album』と、1994年のデビューから現在に至るまで精力的に活動を続けていらっしゃいます。
……とまあ、このように語ろうと思えば一日中でも語っていられるWeezerなのですが、そのお話はまたいずれ。
■当時中学二年生俺、困惑
さてそんなWeezerの1stアルバム『Weezer』通称: The Blue Albumからこんな曲を紹介したいと思います。
ブルージーなギターリフから始まるこの『Say It Ain't So』は、ボカールのリバース自身の経験が元になっている曲です。
かつて彼の父親が、彼の家族を残して家を去った時、ひどいアルコール中毒だったのだそうで、彼の義父が酒に溺れているのを見ると、かつての父親のように出て行ってしまうのではないか……と不安を感じてしまう、そんな気持ちを歌った曲です。
哀愁漂うリフに、爆音のギターとリバースのエモーショナルなボーカルが重なり、物悲しくも激しく、そして美しい聴き心地になっている1stを代表する曲の一つです。
とても素敵な曲ですが……ところでタイトルの意味わかります?
中学二年のときにこの曲を聞いた時からずっと好きな曲なのですが、私は肝心のタイトルがどんな意味なのか、さっぱり分からずにいました。
具体的にどこが分からんのかというと、それはみなさんが分からんであろう箇所と同じ、すなわちこの"Ain't"の部分です。
サビでも繰り返し『Say it ain't so』と歌われていますが、さてこれはどう意味なのか。
きっとこの"ain't"は、『何か + not』の略であることは想像が尽くし、そして正解なのでしょうが……。
そして中学生の頃の私は、『will not』の略が『won't』になるように、きっと『何かの助動詞 + not』の略であろう、そしてそのうち授業で習うだろう、みたいに楽観的に結論付けたのでした。
しかし中学三年になり、高校生になり、大学受験を経ても、英語の授業の中には現れませんでした。
果たしてこの"ain't"はナニモノなのでしょうか。
■"Ain't" ain't in the textbooks.
答えから述べますと"ain't"は『am not』の略なのでした。
元々はそのように使われていた"ain't"は次第に使われる人称や時制の幅を広げていき、『am not』の略としてだけではなく、『aren't』『isn't』『haven't』『hasn't』の代用として使われるようになり、そしてそれらは方言として残ったということのようです。
そりゃ日本で使われる英語の教科書には載りませんよね。
要するに乱暴に言うと"ain't"は『be動詞 not』の略あるいは『完了のhave/has not』の略なのでした。
数年にわたり私を悩ませていた疑問は、かくのごとき簡単な答えが潜んでいたに過ぎなかったのです。
まあ、長年の疑問なんて往々にして意外と単純明快な答えによって終わらされるものなのかも知れません。
つーわけで『Say it ain't so』は『Say it isn't so』と同じ意味で、訳すと『そうじゃないと言ってくれ』です。めっちゃ簡単。
ついでに他に"ain't"が登場する文も訳してみましょう。
せっかくですので同じくWeezerの、2ndアルバム『Pinkerton』収録の『El Scorcho』の一節から。
But that's just a stupid dream that I won't realize
Cos I can't even look in your eyes without shaking, and I ain't faking
後半に現れるこの部分に"ain't"は登場します。
まあほぼほぼ"ain't"関係ないですけど。
まず一行目は『でもそれは実現できないバカな妄想なんだ』くらいでしょうか。
『realize』には『〜に気がつく、〜と悟る』のような意味の他に『〜を実現させる』という意味もあります。
『Cos』は言わずと知れた『Because』の略で、カンマの手前まで訳すと『だって君の目を見つめると震えちゃうんだ』でしょうか。
『look in』は『〜を覗き込む』というのが一般的な意味合いでしょうが、『君の目を覗き込む』ではちょっとオカシいので『見つめる』くらいにするのが妥当かなと思いました。
またベタっと訳すと『なぜなら震えることなしに君の目を見つめることができないから』になりますが、それだとやはり不自然な感じがしますので意訳して先ほどのようにしてみました。
そして"ain't"が登場する最後の部分は、『fake』はいくつか意味がありますが目的語を伴っていないので『見せかける』のような意味でしょう。
で、"ain't"ですが、後ろの『fake』が『faking』になっているので『am not』の略で現在進行形だと分かると思います。
つまり『見せかけていない = 嘘じゃない』みたいな意味になろうかと思います。
以上まとめると、
でもそれは実現できないバカな妄想なんだ
だって君の目を見つめると震えちゃうし 嘘じゃないよ
といった感じでしょうか。
■けどあんまり役に立たないような……。
いかかでしたか。
これでもうあなたの眼前に"ain't"が現れても狼狽える心配はなかろうかと思われます。
しかし前述の通り方言のようなものなので、英語の試験とかニュース記事みたいな公的な場所では見られないでしょうし、役に立つ知識かと言われればビミョーなところです。
まあ、小説を読んでるときとか映画見てるときには出てくるかもしれないし、また私のように洋楽を聞いているときにも登場するかも……。
というわけで今回は私の中学時代の思い出と当時の疑問に関するお話でした。
では。